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youthful daysヲタクなので映画「セトウツミ」を観ました

いきなり何の話?という感じで恐縮だが、私は筋金入りの「youthful daysヲタク」である。

youthful daysヲタクというのはミスチルの同名曲の熱狂的なヲタクということではなく(あの曲も好きです)、その名の通り「いかにも若者っぽい(youthfulな)日常(days)」およびそれに類するコンテンツをひたすらに鑑賞し愛でる種類のヲタクのことだ。

私が最近勝手に名乗っているだけなので、別にそういうジャンルが確立されているわけではない。

確立されているわけではないが世の中には「10~20代の若者のいかにもyouthfulな日常と青春」を取り扱ったコンテンツが無数に溢れており、私はそれらを一括りに「youthful daysコンテンツ」と呼んで有難く消費させていただいている。

これまで私がドハマりしたyouthful daysコンテンツとしては、ドラマ「木更津キャッツアイ」、ドラマ「Stand Up!!」、女子アイドル全般(特にハロプロ&48系)、直近ではフリースタイルダンジョン(およびその周辺の日本語ラップカルチャー)などがある。あと高校生ダンス選手権などもかなり好きだ。

とにかく「若者が複数人で何かに向かって頑張ったり、頑張らなかったとしても何らかの絆を築いたり、仲間と一緒に泣いたり笑ったり喋ったりわちゃわちゃしている"日常"が見たい」「そして出来ればそれは生々しい恋愛や性愛とは無縁のものであってほしい(よって男子だけ/女子だけのコミュニティの中で紡がれるホモソーシャルな関係性の方が望ましい)」という欲求が常にあって、それを満たしてくれるものをいつでも探している。

もう今「若者」「日常」「青春」「youthful days」という単語をタイプしているだけでも強烈なエモさを感じて涙ぐんでいるのでちょっと病気かもしれない。

これは私が小4くらいから不登校気味だったため学校という場所にあまり良い思い出がない(行ったり休んだり行ったり休んだりしていた)こと、それによって生まれてきた「ああ…永遠に失われた私のyouthful days……」という世にも気持ち悪い郷愁や後悔と深く関係していると思うのだがそんな話は一旦置いといて、

 

映画「セトウツミ」を観ました。

 


池松壮亮&菅田将暉!映画『セトウツミ』予告編

関西の男子高校生2人が放課後に何となく会話するだけという異色さで話題の、此元和津也による人気漫画を実写映画化。タイトルは瀬戸と内海という主人公2人の名前を組み合わせたもので、彼らが交わす嘲笑的でユーモアを織り交ぜた掛け合いが展開していく。クールな内海役には『海を感じる時』などの池松壮亮、天然キャラの瀬戸役に『共喰い』などの菅田将暉。監督は『まほろ駅前多田便利軒』などの大森立嗣が務める。

 

キャッチコピーにもある通り、本当に関西の男子高校生2人が河原でダラダラ喋るだけの映画である。

とにかく雑談、雑談、雑談に次ぐ雑談。

事件は何も起こらない。舞台もメインの河原からほとんど動かない。

BGMも地味(もしくは無音)。分かりやすいクライマックスもどんでん返しもない。

 

ただ、それがたまらなく良かった。

我々youthful daysヲタクはまさにこういう「何でもない高校生が親友と過ごす何でもない放課後」を物陰から覗きたくて覗きたくて仕方ないわけなので(リアルでは覗いてません)、この徹底した「起伏のなさ・何でもなさ」が本当に良かった。

短いエピソードをどんどん繋ぎ合わせていく構成はどちらかというとTVやWeb向きの連作ショートドラマに近く、あまりに淡々と進むので途中で「いや…(笑)映画館の大スクリーンで一体何を見せられてんねん(笑)」という気分になったりもするし、一本の映画としてはその辺りどうしても賛否両論あるとは思うのだが、

よくよく思い返してみれば、リアルな青春とはまさにそういうものだったかもしれないのだ。

大きな事件も起こらない、胸を張れるような功績もない、ドラマチックな展開も別にない。

でも本当に何でもない、なんてことない小さな瞬間がふいに人生のスクリーンに大写しにされて、何故だかずっと記憶に残っていたりする。

 

「男子高校生の放課後フゥ~~!」とか言って他人の青春を目いっぱい摂取しようと映画館に足を運んだはずなのに、瀬戸と内海の本当に何気ない日常の一コマを見ているうちに、いつの間にか自分の高校時代の「なんてことない小さな瞬間」の記憶もどんどん甦ってきた。

 

文化祭のクラス演劇、本番の様子なんて全く覚えてないけど「よく読んだらこの台本めっちゃBLじゃない!?絶対こいつら付き合ってるやん!」と友達と笑い転げた帰り道のことは今でもはっきり思い出せるな、とか、

教室の隅で縮こまって灯油ストーブに手をかざしながら、廊下で騒ぐリア充軍団を眺めて「あんな風にメインストリートを堂々歩ける人間になりたかった…」「わかる…」とぼそぼそ話したあの日は確か雪が降ってたな、とか、

ヤンキーもギャルも私みたいなヲタクも平等に受け入れてくれる保健室の静寂は結構好きだったな、とか、

誰とも話したくなくて体育館裏にしゃがみ込んで一人ひっそり食べたお弁当もあれはあれで美味しかったな、とか。

 

そんなパッとしない日常の切れ端を一つひとつスクリーンに投影して眺めているうちに、「あれ…?これってもしかして、いわゆる青春だったんじゃない…?」という気持ちになってくる。

私の人生にはキラキラした青春なんて無かったし、これからも無いし、だからもう一生手の届かないそういう眩しいものたちに憧れて恋い焦がれて生きていくんだろうと思っていた。

でも、あれもこれもそれも、ひょっとしたらまあ、青春だったのかもしれない。その時は絶対にそうは思えなかったけど。

 

自分の中にあるコンプレックス、というか所謂「心の穴」とやらをエンタメで埋めたくて観に行ったのに、映画館を出る頃には「実は穴なんて開いてなかったんじゃないか…?」と思わされている、なんとも不思議な娯楽体験だった。

いわば青春セラピー。そう、セトウツミは私にとっての青春セラピーだったのかもしれない。(青春セラピーって何…?)

 

 

あと瀬戸役の菅田将暉さんが異様なほどにハマり役だった(今「バカで天真爛漫でやんちゃな関西の男子高校生」を演じさせるなら彼しかいない、絶対に誰も敵わない)ことや、あんなにも美しい中条あやみさんを「BLによく出てくる噛ませ犬女子」としか言いようがない役柄にあてがってしまう大胆かつ贅沢なキャスティングも実に印象的(本作がBLというわけではない)。

私と同じyouthful daysヲタクの方や男子のわちゃわちゃを見るのがお好きな方には勿論、軽~中度の青春コンプレックスをお持ちの方にもオススメです。(と言いつつ上映期間は残り短そうなので、DVDなどでもぜひ)